心を癒すお花の話
四季のある国に暮らしていると、季節ごとに、その姿かたちや色、香りで、私たちを楽しませ、元気
づけ、癒してくれる草花たちとの出会いに恵まれます。
これは、そんな草花をこよなく愛する私がお届けするメッセージです。
太陽の花 向日葵(ヒマワリ)
真っ青な夏空に黄色いヒマワリの花✿ まさに夏の元気を象徴するようなその花には、人の心を
明るくする、不思議な力がありますね。 その名は、花が太陽の方向を追うように動くことに由来
すると言われますが、太陽を追って動くのは、生長が盛んな若い時期だけで、完全に開いた花は、
東を向いたままになります。
ヒマワリの原産地は北アメリカ大陸西部といわれ、その種は紀元前からインディアン達の貴重な
食料であり、ペルーでは太陽神の象徴として大切にされていたそうです。 コロンブスの新大陸発
見後にヨーロッパに紹介され、その花姿から『インディアンの太陽の花 』 『ペルーの黄金の花 』
と呼ばれました。 そして、日本には17世紀に伝来しました。

元気いっぱいのイメージのヒマワリですが、こんな悲恋のギリシャ神話が伝えられています。
海の神の娘 クリュティエが、太陽神アポロンに恋をしました。 でも、彼には他に意中の女神
がいたので、振り向いてもらう事が出来ませんでした。 悲しみにくれた彼女は涙を流しなが
ら、一日中空を見上げ、アポロンが黄金の馬車に乗って空をかける様子をじっと眺め続け、
やがてヒマワリになってしまった、というのです。
「 私はあなただけを見つめる 」 「 愛慕 」 「 あこがれ 」 「 光輝 」 という花言葉は、これに因
んだものなのでしょうか。

私が〝 ひまわり 〟から連想するのは、まずはオランダ出身の画家 ゴッホの名画です。
1888年8月から1890年1月にかけて描かれた、花瓶に生けられたヒマワリをモチーフ
にしたもので、全部で7枚描かれましたが1枚は戦禍で焼失してしまいました。
このうち1枚は、1987年3月に当時の安田火災海上が購入し、『 東郷青児記念損保ジャ
パン日本興亜美術館 』 ( 新宿 ) に所蔵されています。
美術の教科書などにも必ず登場する有名な絵画ですが、ここに描かれたヒマワリに、私は、
ゴッホの太陽への憧れのようなものと同時に、心に潜む狂気の気配を感じます。
そして、もう一つは、1970年日本公開のイタリア映画 『 ひまわり 』 です。 大学生の時、
学校の近くにあった名画座で、お世辞にも居心地がいいとは言えない固いシートに座り、
何度となく観た、懐かしい思い出があります。
マルチェロ・マストロヤンニとソフィア・ローレンが主演、ヘンリー・マンシー二作曲の主題歌で、
戦争の悲劇をテーマにしたこの作品の中で、何度か登場する、地平線まで続く一面のヒマワ
リ畑・・・その美しさと、なんとも言えないもの悲しさが圧巻です。

真夏の黄色い太陽のような花〝 ひまわり 〟は、文句なしに元気いっぱいのシンボル✿
でも、その中に、ちらりと感じる狂気やもの悲しさ…私にはこれがたまらない魅力に感じる
のです。 それは、ヒマワリに自分の心を映しこんでいるからなのかもしれませんね・・・。
光が当たれば影が出来る。 陰と陽、そのどちらもなくてはならない要素なのです。
両方あるから奥行きが出来る…。 真夏の太陽に向かって咲くヒマワリを眺めながら、
そんなことを思った昼下がりの一時でした。