心を癒すお花の話

四季のある国に暮らしていると、季節ごとに、その姿かたちや色、香りで、私たちを楽しませ、元気

づけ、癒してくれる草花たちとの出会いに恵まれます。

これは、そんな草花をこよなく愛する私がお届けするメッセージです。

富貴な美しさ  芙蓉(フヨウ)

芙蓉の優しい印象の花は、昔から〝 美しさ 〟のたとえに用いられ、女性の美しくしとやかな顔立ち

のことを 『 芙蓉の顔 』 、富士山の美しさを 『 芙蓉峰 』 などと表現したりします。

古代中国 後蜀 ( ごしょく )のある皇帝は、その都 成都の街に160キロにもわたって芙蓉を植え、

街中に咲き誇る花の艶やかな美しさを、数千人の美女たちに囲まれて愉しんだと言われています。

さすが中国の言い伝えだけあって、やや誇張が強いのかもしれませんが、芙蓉は中国でも昔から

観賞用の花木として親しまれ、絵画や陶磁器、衣装、建物などの模様として好んで描かれています。

芙蓉の花は、朝咲いて夕方にはしぼんでしまう一日花ですが、夏のはじめから10月ぐらいまでの

長期間にわたって、毎日次々と新しい花を咲かせてくれます。 花言葉は 「 繊細な美 」 「 富貴 」

「 しとやかな恋人 」 など、この花の印象そのままのものとなっていますね。

また、秋も深まり、種を結んで茶色く枯れたその姿も印象的とされ、〝 枯れ芙蓉 〟 と呼ばれ、季節

の花に添えて華道の花材として使われたりもします。  枯れた姿になお風情を感じられる、引き立て

役ではあるものの、それがあるからこその美しさを作り上げられる … 〝 枯れ芙蓉 〟は、人生の秋

を迎えている私には、なにやら心に響く存在でもあります。

さて、同じ芙蓉の花の写真でも、このようにして青空をバックにしたものを見ると、あれ・・・

思われる方も少なくないのではないでしょうか。  そう、南国の花ハイビスカスによく似ています。

それもそのはず、芙蓉とハイビスカスは同じ仲間の植物で、芙蓉の学名は〝 Hibiscus mutabilis 〟

〝 ハイビスカス 〟 という言葉が入っていますよね。

同じ種類とはいえ、ハイビスカスの印象は情熱的な南国の花 … 。 その花言葉も 『 新しい恋 』

です。 オリエンタルビューティーな印象の芙蓉とは対照的で面白いですね。

これは、昔我家の庭にも植えられていた酔芙蓉の花です。 朝咲き始めた白い花が、時間がたつ

につれてピンク色に染まっていくその様が、酔って頬が染まっていくことに例えられているのです。

この酔芙蓉の花を、亡き母はとても愛でていました。 「 今朝はたくさん花が咲いているわよ !

「 今朝は〝 芙蓉の間 〟にトンボのお客様がきていたのよ 」 と、朝食のテーブルで嬉々として

話してくれた姿が、その声が、今でも甦ってきます。

何故この花木が我が家の庭からなくなってしまったのか … 今はそれを尋ねる人もなく、この謎が

解明されることはなさそうです。 でも、この花にまつわる私の記憶は、思い出という形になって、

消え去ることなく残っています。 それはひょっとしたら、事実よりも美化されたものになっているの

かもしれません。 でも、思い出とはそういうものなのではないかな … 私はそう思うのです。


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