心を癒すお花の話
四季のある国に暮らしていると、季節ごとに、その姿かたちや色、香りで、私たちを楽しま
せ、元気づけ、癒してくれる草花たちとの出会いに恵まれます。
これは、そんな草花をこよなく愛する私がお届けするメッセージです。
宇宙にも通ずる調和の美 コスモス
秋の訪れとともに、ちょっとした道端や公園など、私たちの身近なところで風に揺れるその
姿を見かけるコスモスの花。 もともとはメキシコの2400mから2700mの高地に自生して
いた植物で、トウモロコシやヒマワリ、サボテン、カンナ、マリーゴールドなどど同じように、
コロンブスのアメリカ大陸発見により、ヨーロッパに持ち込まれました。
日本には江戸時代の終わりごろ、日本女性に恋をしたイタリアの教育者によって輸入され
次第に浸透していった…というちょっぴりロマンチックなお話が伝えられています。

花名のコスモスはギリシャ語の 『 Kosmos 』 ( 調和、美しさ、宇宙 ) に由来し、花びらが
整然と並ぶその花姿から、18世紀にスペインマドリードの植物園で名付けられたそうで
す。 英語では 『 cosmos 』 ですが、これはまさに〝 宇宙 〟ということでもありますね。
花言葉もコスモス全般のものが 「 乙女の真心 」 「 調和 」 「 謙虚 」 など、その名前の由
来や優しげな花姿からのものとなっています。 花色別では赤は「 愛情 」 、ピンクは
「 純潔 」 、白は 「 優美 」 、そして品種改良によって人工的に作られた黄色に何故か
「 野生の美しさ 」 の花言葉とは…なんだか面白いですね。

そして、このシックな色合いのものは〝 チョコレートコスモス 〟といい、実際にチョコレー
トのような甘くほろ苦い香りがします。 花束やアレンジメントなどに入れるとちょっと大
人っぽくエレガントになり、私も大好きな花なのですが、ちょっと気を付けたいのはその花
言葉です。 「 恋の終わり 」 … まあ、これもとらえ方次第で〝 恋が終わって愛の領域に 〟
とも〝 ひとつの恋の終わりは、次の恋へのスタート 〟とも、どのようにでも考えられます
が、プレゼントにする時には気を付けた方がいいのでしょうかねえ…。

背の高いコスモスは、強い風が吹くと倒されてしまう事が度々ですが、そんな時にもやが
て茎の途中から根を出し、倒れていたことなど微塵も感じさせないようにすっと立ち上がり、
また花を咲かせます。 その生命力の強さは、繊細で頼りなげな見た目とはだいぶ違うも
のです。

ところで、コスモスは実はキク科の花なのです。 しかし漢字では〝 秋桜 〟で〝 桜 〟と
いう文字が使われていますね。 これは花びらの重なり方や形が桜に似ているためと言
われていますが、私たちの身近なところで、秋風にゆらゆらと揺れて咲くその様子が、ど
こか春に桜を愛でる日本人の心の琴線に触れる … ということでもあるのでしょうか。

さて、コスモスの和名〝 秋桜 〟の音はもとは〝あきざくら〟ですが、今ではこの漢字も
〝 コスモス 〟と読まれることが多いのではないでしょうか。 実はそのきっかけになった
のは、1977年に山口百恵さんが歌った 『 秋桜(コスモス) 』 の大ヒットだと言われていま
す。 穏やかな小春日和の中、結婚を明日に控えた娘と母親それぞれの気持ちが綴られ
た歌詞 …。 改めて読んでみると、しみじみと、そして色々な意味で私の心に響きます。
娘達には、コスモスの花のような優しさとしなやかさ、そしてたくましさを持って生きていっ
てほしいと、そして自らも生きていきたいと、そんなことを思う秋の一日です。