心を癒すお花の話
四季のある国に暮らしていると、季節ごとに、その姿かたちや色、香りで、私たちを楽しま
せ、元気づけ、癒してくれる草花たちとの出会いに恵まれます。
これは、そんな草花をこよなく愛する私がお届けするメッセージです。
父の思い出の花 シャコバサボテン
ブラジル リオデジャネイロ州の霧深い高山で、森林の樹木にくっついて生活しているサボ
テンを園芸用に品種改良したというシャコバサボテン。 日本には明治時代に伝わり、そ
の葉の形が〝蝦蛄(シャコ)〟に似ていることから、そう呼ばれています。
日が短くなると咲く短日植物で、クリスマスが近づく頃咲くので〝クリスマスカクタス〟、あ
るいは、現在流通している品種のほとんどがデンマークで生み出されたことから、〝デン
マークカクタス〟とも呼ばれています。

実はこの植物には葉がありません。 葉のように見えるのは茎節という茎が節で繋がり
葉の役割を果たしているもので、ひとつの節には数個のトゲがあります。
そんなちょっとエキゾチックでユーモラスな草形からは想像もつかないような美しい花に
は、「 ひとときの美 」 「 美しい眺め 」 「 愛される喜び 」 などという花言葉が付けられて
います。

また、まるで 『 みにくいあひるの子 』 のような変身ぶりからか、「 波乱万丈 」 などと
いう花言葉もあるのですよ。 確かに花のある時とない時では、同じ植物とは思えない
くらいのギャップがありますよね。

亡き父は大変に手まめな人間でした。 日曜大工はもちろん、庭の木々の手入れも
率先してやってくれていたのです。 実は、シャコバサボテンは、そんな父のお気に
入りの植物の一つでした。
この花を見ると、「どうだ、今年も見事に花が咲いたぞ、キレイだろう ^^!」 と得意気
な父の笑顔が思い浮かぶようで…。 3年ほど前でしょうか、父が亡くなった年の今頃、
久しぶりにこの花を花屋さんで見かけた時に、思わずピンクと白の2鉢を買ってしまい
ました。

そして今年、少し早目に咲き始めたかな…と思っていましたら、先週の長女の結婚式に合わ
せるように、ピンクのシャコバサボテンが満開になりました。 初孫だった長女のことを、まさ
に〝目の中に入れても痛くない〟とばかりに可愛がってくれた父からの祝福…♡
母と二人で、目を細めて長女の晴れ姿を見守っている父の姿が、この花の向こうに見える
ようでした。 親から子へ、子から孫へと繋がれていく命のリレー…。 やがて誰もが迎え
る命の終わりの時。 その時に身体は消えてしまっても、残された者たちの心の中、無意識
の深い世界には、確かに何かギフトが残されていく…心理学での一番新しい領域、トランス
パーソナル… シャコバサボテンの美しさに、そんな事を感じる時間を過ごした私です。
