心を癒すお花の話
四季のある国に暮らしていると、季節ごとに、その姿かたちや色、香りで、私たちを楽しま
せ、元気づけ、癒してくれる草花たちとの出会いに恵まれます。
これは、そんな草花をこよなく愛する私がお届けするメッセージです。
クリスマスのシンボル モミの木
クリスマスまであと1週間足らず。 皆さんのお家でもクリスマスツリーを飾られましたか?
クリスマスツリーには、一般に〝モミの若木〟が使われますが、ここでいう〝モミ〟とは正確に
は〝欧州モミ〟と呼ばれる樹木を指し、和名で〝モミ(樅)〟と呼ぶ木は、日本特産のもの
だそうです。
今では、キリスト教の行事であるクリスマスのシンボルでもあるクリスマスツリーですが、その起源
は、それとは無関係で、原型は北欧に住んでいた古代ゲルマン民族の 『 ユール 』 という冬至
の祭で使われていた樫の木に遡るといわれています。

彼らは〝闇〟と〝死〟と〝寒さ〟に支配される冬でも、緑の葉をつける樫の木は〝希望〟
〝堅実さ〟〝生命〟の象徴だとし、信仰の対象としていました。
また、ドイツ中部の山岳地帯には、モミの木には小人が宿っており、彼らがそこに留まると村に
良いことがある、という信仰があり、花や卵、ろうそくの明かりなどをこの木に飾りその周囲を踊り
ながら回るお祭りをしていました。

やがて、キリスト教の布教に宣教師たちがこの地を訪れるようになり、彼らをキリスト教に改宗さ
せようと試みましたが、この樹木信仰が根強くうまくいかなかったそうです。
そこで、樫を樅(モミ)に変えました。 モミの木は横から見ると三角形ですので、父なる神が頂点
で、子と精霊が底辺の両端に位置する 『 三位一体 』 を表している、というキリスト教の教えを
伝えるのに適していたのです。
こうして、ドイツではモミの木と結びついたキリスト教が広まり、1419年にはフライブルクで、パン職人
の信心会が、聖霊救貧院にツリーを飾ったという記録があります。 これが、クリスマスツリーをクリス
マスに飾る行為の最初とされ、ここから世界中にこの風習が伝わっていったのです。

欧米では、クリスマスプレゼントやカードをツリーの下に飾り、クリスマスの日を待ちます。
また、ツリーに飾るオーナメントにもそれぞれ意味があります。 ベルはキリストの誕生を知らせる
ものであると同時に、羊にベルをつけて迷子にならないようにすることから、人々も最期は神の
元に帰れるように…という意味であり、キャンディーの杖は助け合いの心、リンゴはアダムとイヴ
が食べた〝知恵の樹〟の象徴です。
ヒイラギは、キリストがすべての人の罪を背負い、十字架にかけられた時に被せられた茨の冠
と、その赤い実をキリストの流した血に見立てる一方で、そのトゲのある葉が魔除けになるとい
う意味もあるようです。
ツリーのてっぺんに飾る星は〝トップスター〟と呼ばれ、キリストが生まれたベツレヘムへ東方の
三賢人を導いた〝ベツレヘムの星〟を表しています。 欧米では天井に届くほど大きなツリー
も珍しくなく、このトップスターを飾るのはお父さんの特権だといわれています。 また、イギリスで
は、星の代わりに〝クリスマスエンジェル〟と呼ばれるエンジェルが飾られるそうですよ。

モミなどの針葉樹、ヒイラギなどは、クリスマスリースの土台として使われることもありますが、常緑
〝 ever green 〟 はまさに永遠や生命のシンボルです。 クリスマスの直前に迎える冬至は一
年で一番地上に届く太陽の力が弱まる日…。 という事は、その翌日からは、少しずつその力が
よみがえるということ。
古きゲルマンの人たちが常緑の木々に寄せた信仰の心、希望の思いは、今の私たちの心にも
響くものだと思います。
私はここ数年この時期に、フレッシュの針葉樹の枝でクリスマスリースを作っています。 森の香り
に癒されながら、今年一年を振り返り、来る月日に思いをはせる時間は最高の自分へのクリス
マスプレゼントです。 実は明日がそのレッスン日❣ さて、今年はどんなリースが出来上がるで
しょうか。