心を癒すお花の話
四季のある国に暮らしていると、季節ごとに、その姿かたちや色、香りで、私たちを楽しま
せ、元気づけ、癒してくれる草花たちとの出会いに恵まれます。
これは、そんな草花をこよなく愛する私がお届けするメッセージです。
鮮やかにしもの悲しき冬の花 寒椿
早春に咲く椿よりも一足先に、寒さ厳しいなかで鮮やかな花を咲かせる寒椿。 これより少し
早い時期に見かける山茶花(サザンカ)によく似ており、その一種とも、椿と山茶花の交雑種
ともいわれます。

山茶花との区別はなかなか難しいのですが、一般的に言って、山茶花は、晩秋から初冬にかけて咲
き、花弁の数が5~10枚ぐらいで背丈が高いことが多いのに対して、寒椿は寒さの盛りから早春に
かけて咲き、花弁の数は14枚以上、枝が横方向に伸びるので、背丈が高くならないという特徴が
あります。

花は、一般的には濃い紅色の八重咲きが多いのですが、白や桃色のものもあります。 葉は、暗い
緑色をした先のとがった細長い卵型で、ツヤがあり、淵にはギザギザがあります。
また、花には仄かな芳香がありますが、これは椿にはなく、山茶花にみられる性質です。

花の散り方も、花姿そのまま落ちる椿とは違い、花弁がばらばらになって散る〝 サザンカ型 〟です。
枯れ草などの上に、敷き詰められるように散り積もった花弁もまた風情のあるもので、私の好きな
景色です。

花言葉の「 謙譲 」 「 申し分のない愛らしさ 」 は、寒さの中、さらに、かなりな日蔭にも咲く、鮮や
かにして控えめな、その花の姿によるものなのでしょうか。
椿は英語ではCamellia(カメリア)、山茶花も寒椿も、植物としての属名は同じです。 そして、
Camellia といえば、かの〝CHANEL〟がモチーフに使っていたり、有名なオペラに〝椿姫〟があった
りと、華やかさや豪華さを感じるものですよね。

一方、同じ仲間とはいえ、花の少ない寒さの季節に、健気に、たくましく咲く寒椿、そして山茶花には、
冬枯れの景色の中で、パッと目を引く鮮やかな花色や花姿のうらに、密やかさや秘めた悲しみのような
ものを感じてしまいます。
厳しい季節のなかの精一杯の笑顔と、その裏にある、悲しみや寂しさ…。 花を眺め思う心、それは
私の心そのものなのだろうか…。 ふとそんなことを思う、冬の陽だまりでの時間です。
