心を癒すお花の話
四季のある国に暮らしていると、季節ごとに、その姿かたちや色、香りで、私たちを楽しま
せ、元気づけ、癒してくれる草花たちとの出会いに恵まれます。
これは、そんな草花をこよなく愛する私がお届けするメッセージです。
幸福と長寿の花 福寿草
幸福の〝福〟と長寿の〝寿〟、おめでたさが重なる福寿草は、新春を祝う花として、年の
瀬になると松竹梅やマンリョウ、センリョウなどと一緒に、南天との寄せ植えなどで出回ります。
南天はその音から〝難を転ずる〟ことを表し、この2つを一緒にすると〝難を転じて福となす〟
という意味になり、とても縁起のいい飾り物となるのです。 本来は旧暦の正月ころに咲く花
ですので、年末に出回るのは促成栽培によるものです。

元日草、朔日草(ツイタチソウ)などという別名もあり、江戸時代の元禄年間ぐらいから、正月の
床飾りとする風習が広まり、盛んに品種改良もされた 『 古典園芸植物 』 の一つです。
咲きはじめのころは茎が伸びず、短い茎の上に花だけが咲きますが、次第に茎や葉が伸びてきます。
花は光沢のあるその花弁を使って、日光を花の中心に集め、その熱で虫を呼び込んでいます。
ですので、陽射しがあると開き、日陰になると閉じてしまいます。

花言葉は 「 長寿 」 「 幸せを招く 」 「 永久の幸福 」 などまさにその花名そのものなのですが、
「 悲しき思い出 」 などというちょっと似つかわしくないものもあります。 これは次のようなギリシャ神
話に由来するものなのです。
美の女神ヴィーナスお気に入りの美少年アドニスは、ある日森へ狩りに出かけ、そこで運悪く
イノシシの牙に突かれて絶命してしまいました。 その時アドニスから流れた血が赤い花になり、
それがフクジュソウ属の花アドニスだというのです。 「悲しき思い出」はアドニスを追悼するヴィー
ナスに由来するのですね。

ここであれ?と思われた方もいると思いますが、日本にあるフクジュソウ属はほとんどが黄色い花を
咲かせるのですが、地中海沿岸に分布しているものは、可憐な紅色の花が咲くのです。

大寒も七十二侯では次侯の〝沢の水が厚く張りつめるころ〟という意味の〝水沢腹く堅し(みず
さわあつくかたし)〟から、末侯の〝鶏が卵を産みはじめるころ〟という〝鶏始めて乳す(にわとりは
じめてにゅうす)〟へと移っています。 かつては鶏の産卵期は春から夏にかけてだったのです。
季節が冬から春へと移ろう頃…早春の野に、庭に光るように咲く黄金の花、福寿草は、まさに見る
ものに福を呼び込んでくれる、そんな予感に満ちた花です。