心を癒すお花の話

四季のある国に暮らしていると、季節ごとに、その姿かたちや色、香りで、私たちを楽しま

せ、元気づけ、癒してくれる草花たちとの出会いに恵まれます。

これは、そんな草花をこよなく愛する私がお届けするメッセージです。

〝夏は来ぬ〟に歌われる花  空木(ウツギ)

触るとざらざらとし、縁にギザギザのある葉をつけた茎をいくつにも分枝し、晩春から初夏

にかけて、その枝先に白い小さな5弁花が穂のように咲くウツギ。 最盛期には、木全体

が白い色に染まるほど花を咲かせ、株を埋め尽くします。

日本原産の植物で、茎が古くなると髄がなくなり、中心に空洞が出来るので〝空木〟と

呼ばれるようになったそうです。 ちなみにその材質は硬く、腐りにくいので、昔から木釘

や神事の時の杵などに使われました。

唱歌〝夏は来ぬ〟で歌われている〝卯の花〟はこの花の別名ですが、 旧暦の4月の

卯月に咲くのがその由来とか。 他には見た目が雪のようなので〝雪見草〟ともいわれ

ています。

〝卯の花の匂う垣根に ほととぎす早も来 鳴きて 忍び音もらす 夏は来ぬ〟

佐々木信綱作詞 小山作之助作曲のこの唱歌、亡き母がこのぐらいの季節になると、よく

台所で歌っていました。 シンプルな言葉で季節感を表現しているところは、さすがですね。

日本の野山に自生していて、万葉集にも24首詠まれており、初夏を飾る花として古くから

親しまれています。 また、土地に入り込もうとする邪悪なものを追い払う力があるとされた

ことから、唱歌に歌われているように、生け垣などにも使われてきました。

また、昔はこの花が咲くのを合図に田植えの準備をし、雨が多くて花が少ない年は凶作、

花の多い年は豊作だと占ってもいたようです。

小さな花がたくさん咲くその姿は情緒深く、通常は一重の5弁花ですが、八重咲きなども

あり種類がとても多いので、それぞれの違いを見つけながら眺めるのも楽しいものですよ。

花言葉は「古風」 「風情」 「秘密」 「謙虚」 「秘めた恋」 「潔白」 「夏の訪れ」 …。

どれもこの花にぴったりな感じがしますね。

シーボルトが日本を代表する植物の一つとして世界に紹介している花〝ウツギ〟は、初

夏の新緑の中で、輝くような真っ白の清々しい姿を楽しませてくれます。 そういえば、ほ

んのりとその香りが漂うこの花の生け垣を、ここのところ、ぱったりと見かけなくなってしま

いましたね・・・。 

子供の時に聞き歌った唱歌の世界が、また一つ消えていってしまったのでしょうか…。

昭和のど真ん中生まれの私としては、一抹の寂しさを感じますが…。 ウツギの花の輝く

ような白は、今も昔も変わることなく、ただそこにそっと咲き続けています。


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